専門家コラム

コラム第1話|サラリーマンのマンション経営

こんにちは。サラリーマン大家の良波直哉と申します。
私は大手の電機メーカーで働くサラリーマンですが、会社の仕事とは別にマンション経営を行っています。

私がマンション経営に興味を持ったのは10年ほど前でした。昼休みに書店で1冊の本と出会ったことをきっかけに、サラリーマン生活の不安定さとリスクに気付かされ、自分と家族の将来のためにとマンション経営を始めたのです。

しかしサラリーマンが思い立ってマンション経営を始めてもうまくいくはずがありません。営業マンに勧められるままにマンションを購入しましたが、その後すぐに退去となり数ヶ月間の持ち出しが続くなど苦しい経験をして、安易にマンション経営を始めたことを悔やみました。
その苦しい経験と真正面から向き合い、ひとつひとつ乗り越えることでマンション経営というものが自分なりに分かってきました。

そして私と同じようにつらい思いをしているサラリーマン大家さんが実はたくさんいることを知ったのです。サラリーマン大家さんの多くは問題が起こっても解決するノウハウがなく、相談する人もいないためひとり悩んでいるのです。

そこで、そんな困っている人たちのために何かできないかと考え、個人で「切磋琢磨サイト」というホームページを開設して、私の失敗や騙された経験などマンション経営のすべてを赤裸々に公開することにしました。
やがてそのサイトを見たサラリーマンの方からマンション経営の相談をしたいという連絡がくるようになり、私自身の経験と勉強にもなるので無料で相談を受けるようになりました。

このコラムではサラリーマン大家である私の失敗・成功の経験や、これまでに受けた相談事例など、サラリーマンのマンション経営に焦点をあて、全5話としてご紹介したいと思います。

第1話:サラリーマンの私が始めたマンション経営
第2話:営業マンから勧められるままに購入したマンション
第3話:成功しているサラリーマン大家さん2人の実例
第4話:サラリーマン大家さんからの相談ごと
第5話:マンション経営の新たな始まり

今回のコラム第1話ではサラリーマン人生に不安を感じ、副業としてのマンション経営に興味をもった私が、どのようにしてマンション経営を始めるに至ったのか、その経緯についてご紹介したいと思います。

サラリーマン人生はリスクだらけという気づき

順風満帆なサラリーマン人生

40歳を過ぎた頃の私は電機メーカーのエンジニアとして働き、やりがいのある仕事に何の不満もありませんでした。家族は妻と2人の子どもの4人家族で、休日は庭で趣味のガーデニングに励むという生活で、仕事も家庭も順調でまさに順風満帆、将来も何の問題もなく安泰であると信じ切っていました。

1冊の本との出会い

私のオフィスが入っているビルの1階には大きな本屋があり、読書が好きな私は昼休みになるとそこで本を探していました。当時は投資や財テクなどにはまったく興味のなかった私ですが、ある本のタイトルが目に入り何気なく手に取ってみました。それはロバート・キヨサトの「金持ち父さん、貧乏父さん」でした。当時の私はこの本に大きな衝撃を受けました。正直なところ自分は「金持ち父さん」の方だと思っていたのです。しかし読み進めていくにつれ自分の人生観がたちまちにして打ち砕かれ、実は「貧乏父さん」であると思い知らされたのです。
この本の良し悪しは賛否両論あるようですが、当時の私にとってはサラリーマン人生を立ち止まって考える大きなきっかけになりました。

自分と家族の将来を考えてみる

「金持ち父さん、貧乏父さん」を読んだ私がまず実行したのは、自分と家族の将来がどうなるかを人生の時間軸に合わせて考えてみることでした。
私のサラリーマン人生は60歳で定年を迎え、その後の年金がもらえるまでの5年間を何らかの仕事で食いつながなければなりません。そして65歳で仕事をリタイアしても、家の修繕費・車の買い替え・子どもの結婚・親や自分の介護など出費は増える一方です。お金がいくらあっても足りません。また何歳まで生きるか分からないので預金を使い果たすわけにもいかず、結局は最期までお金に縛られる人生でした。

さらにサラリーマンといっても定年まで働ける保証はありません。最近では大手企業が倒産すること珍しくなく、倒産しないまでも業績不振によるリストラや病気や怪我、ハラスメントなどで働けなくなる場合もあります。
そう考えるとサラリーマンの人生はリスクだらけで、まるで砂上の楼閣のようなものだと気がついたのです。そして家族の幸せを守るためにも、会社以外の安定した収入が必要であると考えたのです。

会社以外の安定した収入を得るには

会社以外の安定した収入が必要なことは自覚しましたが、そもそもサラリーマンである私がどうすればそのような収入を得られるのかは難しい問題です。会社での仕事があり時間が限られるため、自分の労力を掛けずに得られる収入、いわゆる不労所得でなければなりません。
サラリーマン一筋で働いてきた自分が本当にそんな収入を得ることができるのか、正直なところ自分でも分かりませんでしたが、何もしないよりはましという程度に考え調べてみることにしました。

不労所得の中でもサラリーマンが副業として出来そうなものについて調べてみたところ、 証券投資・ ネットビジネス・フランチャイズビジネス・ マンション経営などが候補としてあがりました。しかし確実に利益を出すのが難しい・多くの労力を要する・初期投資の準備が困難など、ほとんどが候補から外れていきました。そして唯一残ったのがマンション経営だったのです。

マンション経営の勉強を開始

マンション経営の市販本で学ぶ

まずはマンション経営の本を読み勉強を始めました。特にサラリーマン大家さんの本は大変参考になりました。未来の自分の姿とオーバーラップさせてワクワクしたものです。また自身でマンションを管理している大家さんの本では、クロスの張替えや棚などの造作をまで自身でまかなってしまう方もいて、DIY好きの私としては管理にチャレンジしている自分の姿を思い浮かべたりする日々を過ごしていました。

昼休みの読書で得られるもの

マンション経営の勉強を始めると、マンション以外のもっと広い視野での知識が必要と考えるようになりました。そこでビジネスのハウツー本や成功者の事例、メンタル強化など広いジャンルの本を読むようになったのです。特にユダヤ人の教えを説いた本や、世界中で活躍している華僑のノウハウをまとめた本は投資やビジネスを学ぶという意味で大変参考になりました。

また昼休みという限られた時間で読めるのは十数ページ程度と少ないのですが、1度に読む範囲が狭いため後で内容を詳細に思い返し自分の考えをまとめることで、より理解が深まりました。また思い返すことによって記憶に深く刻まれるのです。振返って考えてみると、書かれている内容を一方的に受け入れるのではなく、その内容についての自分なりの考えを持つということもこの昼休みの読書で学んだのかもしれません。そしてこの「自分なりの考えを持つ」ということがマンション経営ではとても大切なことなのです。

マンション経営のセミナーに参加

マンション経営にチャレンジしたい気持ちはありましたが、マンションは何を基準に選べばよいのか、購入するために必要な手続きは何なのか分からないことだらけでした。このため実際のマンション購入はいつになるのか自分でもはっきりとは決めかねていました。
そんな時、不動産会社が主催しているマンション販売のセミナーが数多く開催されていることを知りました。そこでまずは勉強と思いマンション経営のセミナーに足を運んでみたのです。

セミナーには私のような初心者もいれば、すでにマンション経営を始められている大家さんもいて、講師に質問をする大家さんを羨望の眼差しで見ていたのを憶えています。しかしセミナーで説明を聞いても、いったいどのようなマンションが良く、どの会社に購入の相談をして良いのか、正直なところまったく分からない状況でした。

しかし、このセミナーに参加したことで、まだマンション経営を始める心構えさえ持っていなかった私が、あっという間にサラリーマン大家になってしまったのです。

①セミナーの個別相談はまるで霊感商法

多くのセミナーでは最後に個別相談の時間が設けられていました。試しに申し込んでみると、営業マンが私の横に座り、会社名や年収・家族構成・持家の有無などを聞かれました。そしてその質問に答えると営業マンは1枚の紙を差出しおもむろにこう言ったのです。
「あなたにピッタリのマンションはこれです」
私はこの言葉を初めて聞いた時は「霊感商法か!!」と突っ込みたくなりました。

個別相談とは、専門家からどのようなマンションを購入したら良いのか・購入した後に大家としてすべきことは何かなどのアドバイスをもらえるものだと私は思っていたのです。しかし実際には年収や保有資産を聞かれて、あとは一方的にマンションを紹介されただけだったのです。私は思っていた内容とまったく違ったことに大変がっかりしました。
その後もいくつかのセミナーに参加しましたが、どの会社も似たり寄ったりのスタイルで、私としても先に進めずどうしたものかという状況になっていました。

②信頼できると思った営業マンとの出会い

本格的にマンション経営の勉強を初めて半年ぐらい経った頃、あるセミナーで個別相談ではなく懇親会と記載のあるものを見つけたので参加してみました。セミナーの内容はマンション経営のメリットやリスクなどを初心者目線で解説しておりとても分かりやすくて、他の会社のようなマンションの紹介をするだけのセミナーとはまったく違うものでした。その後に行われた懇親会は講師・参加者・営業マンが近い距離で気軽に話ができ、とても良い雰囲気でした。

そこで出会ったひとりの営業マンは、購入後の運用や、5年後・10年後にどうなるか、出口対策はどう考えるべきかなど、アドバイスが具体的で「この人の話は信頼できる」と直感的にそう思ったのです。そしてマンション購入について相談するならこの人をおいて他にはいない!と確信したのです。

③営業マンに相談に行く

営業マンにアポを取り相談に赴くと、年収や勤続年数は事前に伝えてあったので話はスムーズに進みました。その営業マンはマンションだけではなく銀行の融資や税金にも精通しているようで、私はさらに厚い信頼を寄せるようになり、この人にすべてを任せてみようという気持ちになりました。

後になって振り返ってみれば、営業マンが融資や税金について詳しいのは当たり前なのですが、当時の私はそのようなことすら知らなかったのです。

その営業マンはマンションの情報が記載されたマイソクと呼ばれる物件情報の紙の中から何枚かを選び説明を始めました。しかし言葉の意味は理解できてもマンションの良し悪しを判断できない私は、仕方なく「利回りの高いもの」を数枚選びました。すると営業マンがその中の1枚を示して「試しに一度見に行ってみましょう」と言いました。

④マンションを現地に見に行く

週末に営業マンと一緒にマンションを見学に行くことになりました。そのマンションは駅から10分ほどの距離にある12階建のマンションでした。築年数の割にはきれいで管理が行き届いていることが分ります。今回紹介を受けている部屋は入居中ですが同じ間取りの部屋が空いており見せてもらうことができました。一人暮らしには手ごろなワンルームで、壁や床は新築のように綺麗でしたがキッチンは年数が経過していることが一目で分かりました。しかしこのマンションを購入して大丈夫なのか、この時点では私には判断できませんでした。

営業マンからは「私は一生付き合える人にしか売りたくないので是非あなたに購入して欲しい。でも他からも引き合いがあるので、待てるとしても1週間です」と言われました。

マンションを購入するまでの苦悩

営業マンとマンションを見に行った日から1週間、買うべきかやめるべきか、私の苦悩の日々が始まりました。
なぜ苦悩の日々となったのか、その理由は3つありました。
まずは購入するマンションの良し悪しについての自分の考えが確立されてなかったため結論を出せなかったのです。
次に営業マンを信頼し過ぎていたことです。現地まで足を運んでもらったのに買わないとなると、もう相手にされないのではという不安がありました。
そして最も大きな理由は相談できる人がいなかったことです。会社の上司や同僚には相談できず、妻もマンション経営には無関心なのでひとりで悩むしかなかったのです。
そして「現在のサラリーマン生活は砂上の楼閣のようなものだ。このままでは自分や家族の将来は大変なことになる」と自分に言い聞かせ、マンション購入を正当化することで自分を納得させたのです。

そしてついに購入を決意しました。なんと営業マンと知り合ってからわずか10日ほどでマンションを購入してしまったのです。

■安易なマンション購入のプロセス
マンションを購入すべきかどうかの判断に悩みつづけて苦悩の1週間を過ごしましたが、実は自分の気持ちは最初から「マンションを購入する」で決まっていました。なぜなら、この時の私は「マンションを購入するしかない」という気持ちで冷静な判断力を失っていたのです。これは後で振り返って気づいたことですが、真面目なサラリーマンがマンション経営を勉強しようとすると、安易にマンションを購入してしまう流れがあり、私はこの流れに陥っていたのです。そしてこの流れに陥るとまるで週末のショッピングのようにあっという間にマンションを購入してしまうのです。私はこれを「安易なマンション購入のプロセス」と呼んでいます。

この状況に陥りやすい人物像としてはこのような方です。

  • 大手企業の真面目なサラリーマン
  • ある程度の収入がありそのことにプライドを持っている
  • 会社や家庭など周囲の人は「良い人」であることが多く、人を疑わず信じてしまう傾向が強い
  • 学習意欲が大きくマンション経営に興味を持ってセミナーなどにも参加している

最も大きな特徴は、マンション経営をしている人に知り合いがおらず、会社には秘密で家族はマンション経営に興味がなかったり否定的だったりするため、だれにも相談できずひとりで行動している点です。 そして気がつけばいつの間にかマンションを購入している、このからくりは次のようになっているのです。

①マンション経営のセミナーに参加する

セミナーはマンションを売る側と買う側の関係者だけで成り立っています。そしてセミナーの内容は「成功するためのマンション紹介」など、マンションを購入するとこんなに良いことになるといった内容です。また多くの場合はセミナー会場という閉鎖的な空間で開催されています。
これは一種の集団催眠のようなもので、購入するのが当たり前だという感覚に陥ってしまいます。
セミナーはマンション経営者の卵が集まる「巣」であり、教える側の会社は「親鳥」です。 卵からかえった雛が最初に見たものを親と信じてしまうように、セミナー参加者も無意識のうちに親切な営業マンを無条件に信頼してしまうのです。

②マンションの紹介を受ける

「このマンションは利回りが高く、こちらのマンションは駅近です。どちらにしますか」と営業マンが物件の紹介を始めたとします。これはマーケティングでよく使われる心理学的な手法ですが、お気づきでしょうか?
例えばデパートの靴売り場で「黒の靴は落ち着いて見えますし、茶色の靴は今お召しになっているコートに合いますが、 どちらになさいますか?」と提案し「買わない」を選択肢から除外するのです。 この手法を不動産会社の営業マンがどの程度テクニックとして意識しているかは分かりませんが、集団催眠の状態に陥っているこの段階では非常に効果的に働きます。

最後に「こんなマンションを購入できるとは、うらやましい限りです」、「何もしなくても毎月これだけの収入が入りますよ」と持ち上げられ、特権的な立場であるかのような気持ちに導かれます。 そのことにより、さらに「この機を逃してはもったいない」という気持ちになってしまいます。この傾向は、比較的年収の高い方や会社での役職が上位にある方に多いようです。

③マンションの現地確認

営業マンと一緒に現地へマンションを見に行きます。しかし「さあ、どうぞ見てください」と言われても、いったい何を見てよいのかわかりません。マンション経営の経験の無いサラリーマンには確認すべきポイントなど分かるはずがないのです。
試しに営業マンに気になる点を指摘してみても、想定される質問と回答は事前に準備済です。 相手は百選練磨のプロですから、素人のサラリーマンがかなうはずがありません。

④マンションを購入

そして最後は「こんな素晴らしいマンションのオーナー様とはうらやましい限りです」と決めゼリフでおだてられてしまい、そのままマンションを購入してしまうのです。
安易なマンション購入のプロセスは若干の違いこそあれ、大概はこのような流れであることが多いようです。
それでは、ここまでの登場人物を振り返ってみましょう。当の購入検討者以外はすべて「売る側の人間」なのです。

  • セミナー講師(不動産会社の関係者)
  • マンションの紹介(不動産会社の営業マン)
  • マンションの現地確認(不動産会社の営業マン)

セミナーで集団催眠の状態に陥り「マンションを買う」のが当たり前となった状態から、マンション紹介・現地確認に至るまで、売る側の人間だけが登場し話を進めてしまう。私はこれが「安易なマンション購入のプロセス」の正体だと思っています。
そしてこのプロセスに陥ると、営業マンから勧められるままにマンションを購入してしまい、後になってどうしてこんなマンションを買ってしまったんだろう、と後悔してしまうのです。

安易なマンション購入のプロセスに陥らないために

最大の対策としては、まずは家族(特に既婚者の方は奥様がベストです)に話してみましょう。 相手はマンション経営を理解していないので説明しても無駄などと思ってはいけません。 本当に良いマンションであれば自信を持って説明でき、家族の方からも支持されるはずです。きちんと説明できないマンションは購入すべきではないでしょう。意外にこのポイントが「買っても大丈夫なマンションかどうか」を見分ける目安にもなります。

奥様であれば、普段の日常で家事育児などに多くの時間を割いているので、生活者としての視点でマンションを評価することができるからです。

またできることなら「売る側」の立場ではないがマンション経営に関しての経験値がある人に相談し、現地確認への同行などをお願いできたらよいでしょう。 そのためにはマンションを購入する前にマンション経営の経験がある人との出会いを心がけたり、交流を持つようにすることが大切です。
少なくともマンションを購入される前に一度立ち止まり、「売る側」以外の人と一緒に客観的な見直しをすることが大事だと思います。

今回のコラムでは、普通のサラリーマンだった私がマンション経営に興味を持ち、マンション経営のセミナーに参加した結果「安易なマンション購入のプロセス」の流れに乗ってしまい、冷静な判断力を失い営業マンに勧められるままにマンションを購入してしまったところまでをご紹介しました。

次回のコラム第2話ではこの続きとして、大家としての経験どころか心構えすら無かった私が安易にマンションを購入した結果、サラリーマン大家としてどのようなつらい思いをすることになったのか、その実体験を赤裸々にご紹介するとともに、営業マンが勧めやすいマンションとはいったいどのようなものなのかを営業マンの気持ちを踏まえ、解き明かしていきたいと思います。

その他のコラム記事はこちら
第1話:サラリーマンの私が始めたマンション経営
第2話:営業マンから勧められるままに購入したマンション
第3話:成功しているサラリーマン大家さん2人の実例
第4話:サラリーマン大家さんからの相談ごと
第5話:マンション経営の新たな始まり

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